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救われない兄がいる

 私には兄がいる。いるというか、既にいないものとして扱われている。というよりも、姉もいたらしい。正確には「異母兄が1人、異母姉が1人(まだ幼い頃に早世したらしい)、実兄1人」という事になるが、自分でもよく分からない。分からないというか、実兄だろうがそうでなかろうが疎遠なものは疎遠なのでどうしようもない。

 異母兄・姉に関しては、父が亡くなってから存在を知った。相続絡みで一度だけ会った事があるが亡父によく似ており、逆にこちらもよく似ていると言われ、3人揃って苦笑いしたのを覚えている。これから先、会う事は無いだろう。何とも淡白な話だが、そんなものだと思う。「事実は小説より奇なり」なんて言葉があれど、そうそうドラマチックな展開になるなんて事はない。平凡な人間に特殊なカードを持たせたところで有効的に切る事など出来ず、手持無沙汰になるだけなのだ。

 そしてもう1人の兄。そう実兄。何故実兄まで存在しないものとして見なされているのか。それは、あまりにも金銭絡みでトラブルを起こし続けているからだ。初孫で甘やかされたとか何とかで、子供の頃から金銭面において非常にルーズなところがあり、平たく言うと、母の財布からお金をくすねていたらしい。何かあれば誰彼構わず嘘を吐き、お金を借りては返さず、家に戻ってきては何かくすねて出て行く。兄はそういう人間だった。

 子供の頃の私は兄が悪い事をしているのを知っていた。それでも兄が好きだった。家を出て行っても、いつか戻ってくると信じていた。だが大人になったところで幻想は消えた。今でも別に憎いという気持ちは無いが、変に期待するくらいなら最初からいないと思った方が楽だと思っている。だから存在しないものとして扱われているのだ。下手に関われば金銭トラブルに巻き込まれる。それが現実。悲しいね。